野呂邦暢
書物はたんなる活字のいれものではない。紙質、見返しの色、背文字のかたち、紙の匂いと手ざわり、重さ、それらが一つになって書物らしい書物となる。コピイはいわばぬけがらのようなもので、文章は同じでも何か肝腎の要素がないのである。書物を書物たらしめるある種の匂いのようなものが。
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